矢の根
矢の根とは、弓矢の先の部分、現代では「矢じり」という方がイメージしやすい
この物語もいわゆる「曾我物」
あらすじ
時は正月、曽我五郎時致(ときむね、後期の作品では「時宗」と書かれることもある)の住むあばら家
隈取に車鬢(くるまびん)の曽我五郎時致が炬燵の櫓に腰掛け、矢の根を砥石で研ぐ場面。
工藤左衛門祐経を打つために矢の手入れを行う時致。「どんなに敵(かたき)である工藤左衛門の勢いがあるとはいえ、負けることはないが貧乏だ」と嘆きつつ、福の神に悪口を独り言ちる。
そんな中、薩摩主膳太夫が正月の挨拶に訪れ、お年玉として縁起物の宝船の絵を置いていく。
それを眺めながら、よき夢が見られるようにと枕代わりの砥石の下に敷き、昼寝を始める。
夢に曾我十郎祐成が登場する。その中で工藤左衛門祐経に捕らえられた。すぐに助けてくれというであった。
慌てて飛び起き、いざゆかんとするところに大根を馬に背負わせた大根売りが現れその馬を無理やり奪い、大根を鞭に馬を走らせて幕が降りる。
見どころ
1、すべてが豪快
大きな矢、大きな砥石、素晴らしい衣装・車鬢、台詞回し、動き
2、やっとことっちゃうんとこな
「やっとこさ」「どっこいしょ」「うんとこさ」の3つの掛け声が1つになったといわれる用語。荒事の演目では多く使われるが、今作ではとてもかわいらしい1シーンで使われる。
3、昼寝の場面
素晴らしい衣装に砥石の枕、どんな寝姿になることでしょう。
4、薩摩主膳太夫の態度
五郎が歓待を示すもそっけなくお年玉を渡し帰る姿
5、馬
思いのほか大きい、本物の馬のようにしっかり動き。