助六所縁江戸櫻


助六所縁江戸櫻(すけろくゆかりのえどざくら)

江戸の粋な文化すべてをそのまま舞台に詰め込んだとても見ごたえのある作品

登場人物は花川戸助六(実は曽我五郎時致)白酒売新兵衛(実は曾我十郎祐成)花魁(おいらん)の揚巻 髭の意休(ひげのいきゅう)その他たくさんの配役にて上演される素晴らしく贅沢な作品

冒頭にある口上(あいさつ)も様式美を感じるものの一つ

多くの役者が登場するので、なかなか見る機会がない演目

本作は「曾我もの」の一つで、曽我五郎時致 曾我十郎祐成の兄弟が中心に仇討ちを目指す物語の流れをくむ

ちなみに助六寿司(おいなりさんと巻き寿司)はこれに起源があると言われている。お揚げ+巻きもの→揚巻 言葉遊びも粋です!

あらすじ

桜咲く吉原「三浦屋」が舞台。たくさんの花魁が登場。

そこへ多くの新造・お女中など一行を引き連れた揚巻が花道から遅れて登場する。

道中、いたるところで多くの盃をいただき、したたかに酔う姿。

やり取りのあと、舞台正面へ進み床几へ座る。恋仲にある助六の、実母からの手紙を受け取り神妙な表情をする。

そんな中、花魁白玉の一行とともにお大尽(だいじん)の髭の意休が花道から登場。

この髭の意休、ことのほか評判が悪い。

意休、白玉とともに進み、舞台上の床几に座り、助六の悪口を揚巻に言い始める。揚巻も恋仲にある助六を思い言い返す。あまりに激しいやり取りに刀に手をかけようとする意休。ここで座を立つ揚巻。白玉がとりなし、二人は三浦屋へ入る。

助六が蛇の目の傘をさし揚幕から花道へ登場する。花道の上を男伊達を披露しつつ行きつ戻り、舞台へ向かう。

床几へ着くや、花魁からたくさんの吸い付けたばこ(キセル)を受け取る。気に入らない意休。助六があおるも堪えてあしらう意休。

ここでかんぺら門兵衛(意休の手下)が登場し、この緊張感を破る。福山のかつぎ(うどん屋の配達員)が門兵衛とぶつかり、きっちりと謝るかつぎ、ゆるさない門兵衛。許さないなら仕方ない、斬るなら斬れと啖呵を切るかつぎ。ここで助六が間に立って、門兵衛をやり込み、かつぎが退場。

門兵衛子分の朝顔仙平(あさがおせんべい)その他が登場するも、助六には敵わず、意休へ「手下がやられても、(刀を)抜かないのか?」とあおるも、意に介さず。

手下が助六と再度対峙し、舞台から追いやられ、意休も三浦屋の中へ入る。

その手下の中から一人平伏した状態で花道に残るのが、白酒売新兵衛(実は曾我十郎祐成)

ここで助六はその人が兄であることに気づく。ここから兄弟の和む面白いやり取り。

助六の喧嘩を聞かない日はない。なぜ喧嘩をするのか?と問う兄に対し、ここで初めて意中を告白する。喧嘩を吹っ掛け、刀を抜かせて奪われた家宝である刀「友切丸」を探しているのだと。真意を知った兄はともに喧嘩をしようと喧嘩の仕方を習う。

ここで見せ場の一つ「股くぐり」が行われる。

このあと揚巻が一人の武士姿のものと三浦屋より登場。これに嫉妬した助六がこの武士に難癖をつけるも、顔を見て引き下がる。兄がそれをみて、「どうした?私が代わりに痛い目に合わせよう」と出るも、顔を見て床几の敷物の下に隠れる。

武士姿の人は、母親の曽我満江であった。喧嘩癖を直そうと紙衣を助六に着させ、破ることのない様にと言付けし、祐成を引き連れて退場する。

再度意休が三浦屋から登場する。助六は揚巻の打掛の中へ隠れる。意休は変らず助六の悪口を続け、我慢ならぬ助六が飛び出し、一触即発の状態へ。ここで意休が助六へ兄弟そろって敵を討て。そうせねば皆バラバラに倒されると説教し、三脚の香台を刀で叩き割る。

その刹那、助六は刀が友切丸であることを確信し、奪おうとするが揚巻が止める。帰りを待って行動しなさいとたしなめて幕が下りる。

見どころ

1、江戸紫のハチマキをした助六の男伊達

立ち居振る舞い、威勢のよい言葉、粋がすべて詰まったような姿は一瞬も瞬きする間を与えないすばらしさ

2、揚巻の愛情

愛する助六を貶されると本気で怒り、身は斬られようとも思いは切れないと言い放つ心意気が当時の花魁の恋の覚悟を表現しているのかもしれない。

3、花魁の着物

見事なお仕立て。芸術品です。

4、意休の着物

敵役であまりに派手なため、評価が分かれますが、非常に独創的できらびやかな着物。じっくり鑑賞していただきたい。

5、助六登場の花道での舞

初めて見る人は「さっと出ないもんだな」って思う場面ではありますが、このゆっくりとした登場シーンこそ、助六の男っぷりを満喫できる。

6、福山のかつぎ

江戸っ子気質のかつぎ役は若手の注目役者がつとめることがおおい。今回は初舞台となる注目度の高い役者です。愛らしさも兼ね備えています。

7、股くぐり

相手を屈服させることを、股をくぐらせることで表現。理不尽に感じることもある場面ですが、土下座のような嫌な思いを感じず、コミカルに演出されている。

8、兄、祐成

助六(弟、時致)との性格の違い、家族皆が一族想い。

あまりに多くの場面に見どころがあるため、見逃しないように。


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