毛抜とは
まさに現在もある「毛抜き」が謎解きのキーアイテムになります。
「鳴神不動北山桜」という物語を構成する「毛抜」「鳴神」「不動」3部のうちの1つ
本筋となる大きな流れはあるが、各物語が独立した演出なので十分楽しめます。
あらすじ
場面は小野春道の館で始まる。この小野家は小野妹子の末裔であり、家宝を大事に受け継いでいる。
家老の秦民部(はたみんぶ)の弟秦秀太郎(はたひでたろう)と、同じく家老の八剣玄蕃(やつるぎげんば)の息子八剣数馬(やつるぎかずま)の果し合いから始まる。そこへ腰元の若葉が割って入る。まだまだ続きそうな気配の中、朝廷からの勅使の到着を告げる声に両者引く。
勅使の到着を主である小野春道、子の春風。家老の民部、玄蕃が迎える。
勅使は「日照り続きで干ばつが起きている。雨ごいに使うため小野妹子がしたためた短冊を渡すように」と告げる。
春道は春風にすぐに蔵から短冊を持ってくるように指示するが、春風の様子がどうもおかしい。蔵の責任者である民部が秀太郎に替わりに持ってくるように指示する。ここで短冊がないことが露見する。門外不出の家宝の紛失には春風が関与していた。
玄蕃が「家の宝を紛失させたこと、大きな失態だ。どう責任を取るんだ」とまくしたてる。
勅使より1日に猶予をもらい、短冊を探すこととなり、勅使には1日滞留していただくこととなる。
その後、文屋豊秀(ぶんやのとよひで)の家老である粂寺弾正(くめでらだんじょう)の来訪を告げ、民部、玄蕃が迎える。文屋豊秀は姫の錦の前(にしきのまえ)と婚約したが、病のため輿入れができないという話だけで一向に前に進まない様子を確かめるために弾正が使者として訪れた。
玄蕃が「奇病のため、婚姻をないものにしてくれ」と言い、追い返そうとする。弾正はまずは姫に会ってからといい、錦の前が頭に薄衣をかけ登場する。奇病の様子が見えない弾正に対し、玄蕃が薄衣を外す。錦の前の髪の毛がすべて逆立ち。驚く弾正。衣をかけてる間はその病は起きないが、原因不明のため、婚姻を解消してくれと玄蕃が言う。
弾正はともに主が決めた婚姻を勝手に解消することはできないので、春道に面会を求めた。
ここで弾正を中心に場面が変わる。(ここでちょっとした色事風刺となる。)
あまりに珍しい病気のため、弾正は一人で考えにふける。そこへ秀太郎が煙草を持参する。少しやり取りのあと、また一人になったときに手元にある鉄製の「毛抜」で身だしなみを整え、手を放し床に置いたところ、急に立ち上がり踊るように動き始めた。
続いて腰元の巻絹がお茶を持参する。ここでもやり取りがあり、笑いを誘う。
また一人となり、毛抜きと小柄(小刀)を取り出し、放り投げる。ともに立ち上がり踊るように動く。いよいよ化け物屋敷かと怪しむもキセルは全く動かない。思案を深めたところ、またも来客を告げる声に場面が変わる。
今回は小野家へ腰元としてはたらいていた小磯の兄 小原万兵衛が登場する。息子の春風を呼びつける。
万兵衛は小磯が命を落としたと告げる。春風の子を宿した小磯がいるとなにかと都合が悪く、暇を出し、その結果小磯は難産で命を落としたと言い立てる。春風はお金で解決しようとするも万兵衛が固辞し、妹を返せと難癖つける。
ここで別室に控えていた弾正が了見つけましょうと登場する。ここで書付を万兵衛に渡す。「閻魔大王 この手紙を持ってきたものの妹、小磯を返してくれ。」そして弾正は達者にしていると伝えてくれ。言い含める。
万兵衛は準備があるやらなにやらと逃げ帰ろうとするが弾正が討ち果たす。そして小磯の兄は偽物だという。玄蕃が「なぜ偽物と言い切れるんだ」と詰め寄る。弾正は小磯の里は主である文屋豊秀の領地内。小磯が何者かに殺められたこと、そして春風の手紙と大事な品が奪われたことの調べがついていた。そのため討ち果たした、そして奪われた大事な品はこの短冊ではないかと確認する。民部へ返され、春道、錦の前など登場、お家の一大事、難を逃れたことを喜ぶ。
さらに錦の前の病気も治しましょうといい、逆立つ髪に光る鉄製の髪飾りを外す。すると逆立つ髪がおさまり、再び逆立つことはなかった。そして屋根裏に隠れていた大きな磁石を持つ忍び見つけ出す。磁石によって髪が逆立っていた。
すべてが弾正によって解決され、春道より輿入れのため、家宝の太刀を豊秀にお渡すよう玄蕃を通じ弾正へ渡す。弾正は豊秀のお礼を渡すといい、その太刀で玄蕃を討つ。
玄蕃が裏で手をまわしていたことを確信していた弾正が春道に代わり成敗した。
そして小野家の転覆をはかる玄蕃がいなくなり幕が下りる。
太刀を手にした弾正が花道をゆっくりと歩き、終演となる。
見どころの前に少し話を整理
問題1 勅使来訪 求められた短冊紛失
問題2 弾正来訪 錦の前の奇病
問題3 小磯の兄来訪 死んだ小磯を返せと難癖
一度の話に多方面から来訪があり、都度問題が持ち込まれる忙しさ。これらをすべての流れをつかむのが初見では難しく感じるのでさらっと標記しておきます。
見どころ
1、粂寺弾正の人間性
謎解き、問題解決の聡明で痛快。ちょっと煩悩の多い人間味。非常に面白い人物を表現している。
2、わかりやすい勧善懲悪
家老同士の争いを、白(淡い色)と黒の衣装で表現。
3、ストーリーが飽きさせない展開
「見どころ」とは言えないのですが、とても面白いお話です。
主談話
あらすじ化しようと試みるもとてもまとめきれず、ただだらだら書いてしまったと反省するばかり…