2023年2月博多座
スーパー歌舞伎シリーズ
三国志をベースに関羽を主役とするストーリー。演義で有名な「桃園の誓い」にて、猿之助演じる関羽、猿弥演じる張飛、笑也演じる劉備が理想の世界を夢見て義兄弟の契りを結び、荒廃した後漢時代の疲弊した人々を救うべく奔走する場面から話がスタートする。
敵対する魏の曹操、豊かな江東の支配者 呉の若き孫権、新たに蜀を支配下とした劉備の三つ巴 そして各国の名軍師 諸葛孔明 司馬懿 陸遜 それぞれの思惑。策略の道具となる姫の人格、葛藤などが各場面で盛り込まれ、「人」はどういう存在であるべきかを考えさせる作品となってます。
スーパー歌舞伎の見どころ
①大量の水をつかう大立ち回り
三国志で非常に有名な「赤壁の戦い」
雄大な長江を挟んで、魏の曹操が呉の孫権を攻める。蜀と呉が同盟を結び、魏を大敗に追い込み、宿敵の曹操を自害する直前まで追い込む場面につながる。舞台から前列の客席まで水しぶきが舞う中、多くの武将、兵士が大立ち回り。圧巻の演出。
②関羽宙乗り
赤壁の戦い以後、荊州を守る関羽。呉の策略にかかり、麦城でとらえられ斬首される。その首は曹操に送られるが、曹操は丁重に埋葬する。
関羽の死後の世界の場面。結ばれることのなかった女性、多くの盟友宿敵との回想、人が尊厳をもって生きれる世界になったのかなど、多くの想いを巡らせながら天上へ召される宙乗りがラストシーン。舞台から三階席までゆっくりと舞う姿に優雅さと尊さが感じられた。
主の雑感
読み物としては正史といわれる「三国志」と小説化された「三国志演義」が存在しており、現在では三国志演義の展開がよく知られてるように思われます。本作も大部分をそちらに依存しつつ、時代に合わせた脚色を盛り込まれ、物語を知らなくてもひとシーンごとに伝わる展開だと感じました。
衣装も普段の歌舞伎とはちがい、西暦でいえば180年~230年頃をイメージした装束。日本刀、やり・なぎなた、弓がイメージの中、青龍偃月刀、蛇鉾、連弩など武器の種類も見慣れないものが多く使われます。
自由度の高いスーパー歌舞伎ならでは。
言葉も昔の日本語ではなく、現代の口語が使われ、非常にわかりやすい演出でした。
呉の軍師は周瑜 陸遜 呂蒙と時代を追うごとに代わるのですが、本作は「陸遜」だけ設定されています。映画で有名な「レッドクリフ」では赤壁の戦いは「周瑜」、関羽が罠にかかり捕らえられたときの軍師は「呂蒙」となっておりますが、細かいことは抜きにしましょう。
三国志 三國志。標記は様々ですが、今回は演題にそろえております。